クリスチャーノ・ロナウドの挫折と進化

ワールドカップから開幕後、7日目を終え、今のところの大会ベストゲームは、スペイン対ポルトガル戦ではないだろうか。この試合で試合終了間際にフリーキックを決めて、同点とするだけでなく、自身のハットトリックも決めたロナウドは特に圧巻だった。

ハイライトは↓


元マンチェスターユナイテッドのディフェンダーで、クリスチャーノ・ロナウドと共にプレーしたリオ・ファーディナントは、ロナウドについて、
「ロナウドは、メッシよりもプレッシャーを楽しんでいる」と語っていた。ロナウドも自身の映画の中でプレッシャーが大好きだと語っている。

2017-18シーズンのチャンピオンズリーグ得点王とタイトルを獲得。2016年, 2017年のバロンドール(ヨーロッパ年間最優秀選手賞) も獲得し(合計5回)、33歳の今でもその活躍が目覚ましいロナウド。だが、そんな彼にも挫折とも、不遇とも言える時が何度かあった。ここでは、二つのターニングポイントを取り上げたい。

ターニングポイント1 : メッシの影
2007-08シーズンにプレミアリーグとチャンピオンズリーグ(CL)のタイトルを獲得し、2008年のバロンドールも獲得。キャリアの絶頂だったロナウドは、2009-10シーズンにマンチェスター・ユナイテッドからレアルに移籍し、その後もコンスタントにゴールを重ね、2011-12シーズンには、リーガのタイトルを獲得する。しかし、常にメッシと比較され、その活躍はメッシの影に隠れていた。メッシは、2009年から2012年までの4年連続でバロンドールを獲得。特に2012年のバロンドールにおいては、2011-12シーズンは、レアルがリーグ優勝し、バルサは国内カップしかタイトルを獲得していなかったにもかからず、メッシがゲルトミューラの年間最多得点記録85を破り、91得点を取って、バロンドールを受賞した。この当時のロナウドは、ピッチで不満をあらわにし、メッシはアシストするが、ロナウドは、自己中心的、傲慢で、得点する事しか考えていないと酷評された。バロンドールの投票においても、ロナウドのイメージが悪いと、ロナウドに投票しないジャーナリストもいた。また、モウリーニョとの不仲説もこうした状況に拍車をかけた。

しかし、2013年のバロンドール授賞式の直前に、ブラジルワールドカップ出場を決めるプレイオフが行われ、イブラ要するスウェーデン相手にハットトリックを決めて、自身の存在感をアピールし、この活躍が結果として、2013年のバロンドール獲得につながった。この時のロナウドは、辛い時期を過ごした事もあってか、感極まって、授賞式で思わず涙した。そして、これをきっかけに、2013-14シーズンのチャンピオンズリーグでレアルのレ・デシマ(10度のチャンピオンズリーグ制覇)を成し遂げ、2014のバロンドールもロナウドが受賞した。これ以来、メッシと比較されても、さらに自分の事に集中するようになったのは、明らかである。

ターニングポイント2: 怪我とジダン監督下での進化
スーパースターだったジダン監督の下、2015-16シーズンにはレアルで2度目のチャンピオンズリーグを獲得。ユーロ2016では決勝で負傷退場するも、ポルトガルとして、初のユーロ制覇に貢献したロナウド。順風満帆のようにも思えたが、ユーロでの負傷は、ヨーロッパサッカーのトップレベルで、毎試合出場するには、31歳のロナウド(2016年当時)とて、年齢的にも厳しくなっている事をほのめかすものでもあった。ヨーロッパサッカーでタイトル争いをしているごく一部のトップ選手については、週に2~3試合をプレーし、代表の試合なども含めると、シーズンにもよるだろうが、完全なオフシーズンの休みは2週間にも満たないとも言われる。

この負傷もきっかけとなってか、2016-17シーズンから、ジダン監督は、これまでには、考えらない策を講じた。タブーを破り、必要に応じて、ロナウドを休ませるようにしたのだ。また、ロナウドの役割にも変化が表れる。今までロナウドはレアルで左ウィンガーのポジションとしてプレーし、スピード、ドリブル、強烈なロングシュートといった強みを活かして、自らチャンスを作り、得点してきた。4-3-3のフォーメーションで、BBC(ベンゼマ、ベイル、クリスチャーノ)のコンビは、当時のバルサのMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)と比較され、攻撃の象徴でもあった。だが、ジダン監督は、イスコを起用し、マルセロや他の選手を活かす事で、ロナウドに自ら打開するのではなく、得点に専念するストライカーとしての役割を与える。事実、ジダン監督の下では、4-3-1-2/4-4-2といったフォーメーションも採用された。2016-17シーズンのCLでバイエルン・ミュンヘン相手にハットトリックを決めた試合がそれを物語っていた。こうした変更は、怪我がちなベイルに対する対策でもあった事だろう。2017-18シーズンは、4-4-2のフォーメーションで、左に若いアセンシオ、右にバスケスを起用して、ロナウドにお膳立てするシーンもよく見られた。

ストライカーとして、変貌を遂げたロナウドは、2016-17, 2017-18シーズンのチャンピオンズリーグ制覇に貢献した事は言うまでもない。
ロナウドの2017-18シーズンのチャンピオンズリーグゴールは↓


現在のポルトガル代表は4-4-2のフォーメーションを採用。ロナウドは、左のストライカーのポジションに入る。攻撃時には、自らも打開出来るが、必要に応じて下がり、ミッドフィルダーの選手からボールを受けて、連携したり、自身の得点感覚を活かして、自由に左や右の空いたスペースにポジションを取り、他の選手がお膳立てをする。モロッコ戦でゴールを決めて、プスカシュ選手が持つヨーロッパの代表ゴール数84の記録を破ったロナウド。クラブと代表で合計658ゴールを決めている。ワールドカップで更にゴールを量産できるか、その活躍が注目される。