ラクビーとアトレティコ・マドリード

レアル・マドリード、バルセロナや他のヨーロッパの強豪クラブと比べて、アトレティコの予算が少ない事を考慮すれば、他のところで頑張らなければならない。それは走る事かもしれない。フットボールの成功の裏には、時として、口うるさく、厳しいトレーナーの存在がある。アトレティコ・マドリードの選手達は、何故あれだけ走れるのか?

アトレティコにおけるオルテガの存在とラクビー
その正体は、”教授”と呼ばれるフィットネスコーチのオスカー・オルテガにある。シメオネがアトレティコ・マドリードの監督に就任して以来、その成功を影で支えているのは、60歳のウルグアイ人の存在が欠かせない。成功というのは、正しい要素を満たさない限り、決して生まれない。

シメオネが初めてオルテガに会ったのは、シメオネがアトレティコの選手時代だった。そして、2006年にシメオネがラシンの監督になると、オルテガをフィットネスコーチに任命した。以来、アルゼンチンでも、イタリアでも、スペインでも一緒である。

オルテガのバックグラウンドは、実に広範囲に及ぶ。以前は、メキシコ、コロンビア、日本でも働いていた。フットボールのキャリアはあったが、コーチとしてのキャリアの当初は、ウルグアイの首都、モンテビデオにある、ブリティッシュ・カレッジでラクビーがメインだった。そして、彼のキャリアが徐々にフットボールにシフトするにつれて、ラクビーで培った知識を使い、いかにフットボーラーがラクビー選手と同じようにタフでいられるかという視点でトレーニングを行った。オルテガは、エル・パイスのインタビューで次のように語っていた。「ラクビーから転用可能なものもある。どこでプレッシャーをかけるといいのか、どうタックルをすべきか、チームとして、どのように取り組むべきかといった事である。」

だが、ラクビーだけが、オルテガをヨーロッパのフィットネスコーチのトップにしたわけではない。オルテガは役に立つような、あらゆるスポーツの知識を取り入れている。最大酸素摂取量に対する彼の知識と調査は、2013/14シーズンにリーガ・エスパニョーラのタイトルを獲得した時には、とても重要だった。だが、同時に他のフィットネスコーチには、真似する事の出来ない、直感的なところもあったようだ。「どんなに本を読んでも説明の難しい、非論理的な点もいくつかあった。」とオルテガは語っている。

オルテガは、選手から”生き地獄”  と呼ばれながらも、選手達から愛され、尊敬されている。シーズン前には、アトレティコの選手達はセゴビアで時間を過ごす。そこで、オルテガは、14時間の数日間に渡る、只々(ただただ)、走るトレーニングを選手達に課す。夏の暑い日差しの下、ゴルフコースの勾配の上下を選手達は走る。新しく入った選手達は、このトレーニングにショックを受ける。中には、嘔吐する選手もいるほどである。

ジエゴ・コスタのコンディション回復もオルテガが手助け
オルテガは、シメオネの右腕であるヘルマン・ブルゴスに続いて、
最も信頼の置けるアシスタントでもある。オルテガの戦術的インプットは高く評価され、対戦する相手の傾向を元に、彼がカスタマイズしたセッションを計画する事をシメオネは許可している。トレーニングも出来る限り、ゲームに近いかたちで行われ、ほとんど休みもない。また、各選手ごとにアレンジされた計画もあり、ジエゴ・コスタがチェルシーの問題もあり、2017-18シーズンのトレーニングが十分に積めなかった事に対して、オルテガは、彼のコンディション回復を手助けした。チェルシーから移籍後、マドリードに到着して、コスタが初めて口にした事は、2018年の1月の試合に戻る前に、オルテガが彼を正しい状態に戻してくれるという事だった。ジエゴ・コスタはジョーク混じりに次のように語っている。「彼は、自分をシャープな状態にしてくれる。体重計は怖くないが、彼のトレーニングを恐れている。」案の定、オルテガはコスタがもう一度アトレティコでプレーできる資格を得ると、即戦力として活躍出来るよう準備を整え、コスタは、復帰4試合で3得点を決めた。

交代時における、オルテガのインプットは高く評価された。どの選手がコンディションが良いか、誰よりも熟知していた。「もし交代によって、チームが良くなれば、それは素晴らしい事だ。だが、選手が交代出場で入って、レベルが落ちなければ、それも称賛に値するだろう。」とアトレティコの後半における交代が重要である事をオルテガは説明していた。オルテガは、46分過ぎから、ピッチのサイドラインにいて、ストレッチを選手達に受けさせ、誰が選ばれても、準備が出来ているよう、確かめている。それがアトレティコの選手が筋肉系の怪我がほとんどない要因でもある。

オルテガの最も重要な貢献は、心臓系のフットネスである。セゴビアのゴルフコースの厳しいトレーニングもあるが、他のヨーロッパのエリートクラブと同じだけの試合数をこなしながら、そのリズムを保つ能力は、はかりしれない。オルテガは、毎朝、選手の体重を計っており、それだけ彼が毎日、選手のコンディションに注意を向けているという事でもある。

ヨーロッパリーグの準決勝第1戦でアーセナル相手に10人で戦い、80分間走りきれたのも彼がその理由である。