戦術: 攻撃と守備戦術の基本

アルゼンチン代表やバルセロナの元監督で、ワールドカップでも優勝経験を持つロサリオ出身のメノッティは、メッシの映画で、フットボールには、大きく分けて、4つの原則しかないと語った (①ラインを広げる事、②組み立て、③ボールを取り戻す事、④守備)。

それを見て思ったのが、戦術の基本の基本を説明したものを個人的に日本で見かけた事がなかったので、今回はそれをまとめて紹介したい。

攻撃と守備の一般原則(横と縦/幅と奥行)
一般的に攻撃においては、ピッチを広く使う事、守備においては、コンパクトに保つ事が重要である。何故なら、フットボールにおいて、スペースと数的優位が常に重要だからである。
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・攻撃における幅
狭いスペースを突破しようとするよりは、前線を広く使って、シュートコースを広げるようにすることで、攻撃陣は、コンパクトに保たれたディフェンスを開かせようとする。ウインガーを使ったプレーや、ゴールへ近づく際に、素早く空いたスペースへ動くといったプレーで、ピッチを広く使うことができる。こうすることでディフェンス陣に隙間が生まれる。特に後半は、ディフェンスが疲れており、コンパクトに保つ事が難しくなる。ジダンもチャンピオンズリーグ決勝でベイルを投入したのは、この狙いがあった。

・守備における幅
ディフェンダーは、コンパクトに保って、スペースを消す。これにより、攻撃陣は、狭く、密集したスペースでプレーせざるを得ない。

・攻撃における奥行
攻撃陣が、後方から前線に上がることで、攻撃の奥行を活かす事ができる。この場合、ターゲットとなるストライカーを起用し、相手のゴール近くに置くことで、相手を引いて守らせ、ディフェンスとミッドフィルダーとの間にスペースが生まれ、そこに選手が走りこむ。

・守備における奥行
ディフェンダーは、相手チームのサポート役の選手や前線の選手をマークし、抑えることで、相手の攻撃の奥行を消す事ができる(近年あまり聞かれなくなった、スイーパー/リベロがこの役割をこなす事もある)。これにより、ボールを持った攻撃の選手は、パスを出せる相手がいなくなる。この代替案として、オフサイドトラップを使う事もある。

・守備におけるバランス
守備では、攻撃されやすいスペースをバランスよくカバーしようとする。例えば、ディフェンダーは、ただボールがあるからといって、単に右サイドに群がるような事はしない。

攻撃の基本戦術
ギブ&ゴー/コンビネーションパス (ワンツー)
ボールを持った選手がチームメイトにパスを出し、すぐにスペースへ動こうとする。もしボールをパスした選手がディフェンダーのマークを外せたら(スピード、動き方、ディフェンダーの認識不足等による)、フリーでリターンパスを受ける事が出来き、ゴールに向かって前進する事ができ、ゴールを脅かす事が出来る。これをワンツーとも言う。

・サイドチェンジ
ピッチの幅を活かして、空いたスペースにいる選手へクロスを出すことにより、ディフェンスのプレッシャーから逃れると共に、新たに攻撃を組み立てる事が出来る為、有効な方法である。守っているチームは、ポジション調整が必要となり、これにより、攻撃チームにとって必要なスペースが生まれる事がある。

・スルーボール
オフサイドにならずに、相手ディフェンスラインの裏をつく事が出来れば、ゴールキーパーと11の状況を作る事が出来る。パスが上手く通らなかったとしても、コーナーキックや、相手陣内でスローインにもなりうる。スピードのある選手がいるチームは、相手の裏のスペースを狙おうとする。守備する側のチームに相手の攻撃選手よりも早いディフェンダーがいない場合、スペースを消す為に、引いて守ろうとする。

・ロングボール
自陣から相手ディフェンスの頭越しを狙ってパスを出し、攻撃陣にボールを追わせる。この戦術においては、ボールを奪い返すことができて、シュートまで持っていく事の出来る、強くて、早いフォワードがいる場合に上手く機能する。

・ディフェンスとミッドフィルダーの間に出来たスペースを使う
一般的な攻撃の組み立て方は、相手のディフェンダーとミッドフィルダーの間にあるスペースへパスを出す事である。ゴールを背にした攻撃選手がボールを受け、前を向こうとするか、ゴールへ向かう選手(この選手は相手のミッドフィルダーよりも前にいるか、ディフェンダーの裏のスペースへ動こうとしている)へパスを出す。フォルス9 (説明記事のリンク: リヴァプールでのクロップの戦術)もこの考え方がベースにある。

バルセロナの例

・トライアングル(三角形)の動き (近年はダイヤモンド/スクウェアの形もある)
トライアングルを形成することで、ボールをキープしながら、安全に、素早く、パスを出して、移動する事が出来る。ポジションを変わっても、新しい選手とまたトライアングルを形成する。この戦術は、中盤でボールをコントロールしたい時に上手く機能するが、今では、攻撃でも用いられる。最も最近では、チェルシーのサッリ監督がトライアングルだけでなく、ダイヤモンドといった形をパスサッカーで利用している。
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・ポジションチェンジ

複数のポジションをこなせる選手がサイド等で、ポジションを入れ替える。マークしているディフェンダーの選手を混乱させる事が狙いで、それがチャンスにつながる事もある (セットプレーでも見られる)。違ったスキルを持った選手(例えば、ドリブルが上手い選手とパスが上手い選手)がポジションチェンジする事で、一時的に相手をあざむ事が出来る。マンマークディフェンスがあまり使われなくなった理由は、ポジションチェンジが原因でもある。

・強いサイドを重点的に攻めて、最終的に逆サイドを狙う
攻撃陣がピッチの片側を重点的に駆け上がることで、ディフェンダーにプレッシャーをかけ、反対のサイドが手薄になり、マークが手薄になっているところへパスを出す。

・ターゲットマンを使う
この戦術は、2人ないし3人のディフェンダーを引き受ける事が出来るストライカーがいる時に有効である(身長が高い選手が一般的である)。たいていは、ストライカーが2人のディフェンダーを引き受けることで、他の選手がフリーになりやすい。特に2人の早いウィンガーを起用することで、相手が4バックの場合、混乱し、チャンスが生まれる。例としては、ワールドカップで優勝したフランス代表は、4-2-3-1のフォーメーションで、ジルーをターゲットマンとして使い、ムバッペ(エムバペ)と、マテュイディをウインガーとして起用し、トップ下にグリーズマンを起用して、チャンスを作る場面もあったまた、セットプレーでもターゲットとなるストライカーが活きる。ターゲットマンを使って、コンビネーションプレー(ワンツー)をする事も出来る。ジルーがフランス代表で得点しなくても重宝されたのは、攻撃のバリエーションを与える事が出来たからでもある。

守備の基本戦術
これは以前に説明したので、下記のリンクを参照頂きたい
関連記事: 戦術:ゾーンディフェンス VS マンマークディフェンス

何故、ポジショナルプレーが重要かお判りだろうか….?ポジショナルプレー=ハーフスペースを攻めるだけではない。それ以上の事がある。

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