モウリーニョが苦戦する理由

アレックス・ファーガソンが2013年にマンチェスター・ユナイテッドを去ってから、5年の月日が流れた。ファーガソンは、在籍した27年間で13回のリーグタイトルをマンチェスター・ユナイテッドにもたらした。だが、それ以降、後任監督の下ではリーグタイトルを獲得出来ていない。ブラジルワールドカップでオランダを3位に導いたルイ・ファン・ハールは、2シーズン在籍し、FAカップを獲得したが、リーグタイトルは獲得出来ず、最後のシーズンを5位で終えた。そこで、タイトルを期待し、任命されたのが、ジョゼ・モウリーニョだった。

モウリーニョは率いたクラブほぼ全てでリーグタイトルを獲得している(ベンフィカ、ウニオン・レイリアを除く)。ポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリード、そして、2度目のチェルシー。特に、シーズン2年目はほぼ確実にリーグタイトルを獲得していた。だが、モウリーニョでも、2シーズン目のマンチェスター・ユナイテッドでは、リーグタイトルに届かなかった。2017-18シーズンは、マンチェスター・シティが勝ち点100を獲得し、マンチェスター・ユナイテッドは81に止まった。レスター・シティが2015-16シーズンに勝ち点81で優勝している事を考慮すれば、そこまで悪い数字ではない。だが、モウリーニョの守備的なスタイルは、伝統的に攻撃的なスタイルを貫いていたマンチェスター・ユナイテッドのファンや、メディアからプラグマティズム(実利主義)として、負ける度に批判を浴びた。

モウリーニョが苦戦する理由
昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドはシティに次ぐ守備を誇った(失点数はシティ27, ユナイテッド28)。だが、それは必ずしもディフェンスが優れていたわけではない。それは、モウリーニョが今シーズンディフェンス補強を望み、獲得出来なかった事からも明らかだ。唯一、優れていたのは、スーパーセーブを連発したデ・ヘアだけだ。そして、約90%の確率でカウンターから先制し、守備を固めて、相手にプレッシャーをかけていた。そうした中で、相手チームは決定的なチャンスがあっても、得点出来ず、相手チームの質に助けられていたところもあるだろう。

一方、先制されたほとんどの試合で負けていた。特に攻撃では、あてもなく、ただ前線にパスを送り(もちろんルカクをターゲットマンとしている場合が多いが)、パスを出す選手を探さなくてはならないといったパターンが多い。早いパス回しや判断スピードが早いわけでもない。チャンピオンズリーグのベスト16で対戦したセビージャのディフェンダー、シモン・ケアは、マンチェスター・ユナイテッドの攻撃のチャンスは、組み立てによるものではなく、偶然によるものだと指摘した。また、ポグバのクリエイティビティや個人技に頼るところも大きい。

攻撃においては、ルカクは格下相手には、ゴールを決められても、トップ5(マンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、トッテナム、アーセナル)相手には得点を決められない。特に、ボールコントロールやファーストタッチはトップクラスの選手からは程遠い。モウリーニョの方が上手いとまで揶揄(やゆ)された程だ。ドログバ、ディエゴ・ミリート、クリスチャーノ・ロナウド、ベンゼマ、ジエゴ・コスタ、イブラヒモビッチといったモウリーニョの下でプレーしてきた歴代のストライカーは、フィジカルが強く、1人でも打開出来たり、難しいシュートを決められる選手達だったが、ルカクはフィジカルが強く、スピードが早くても、カウンターでシュートまで持っていける事があまりない。

時代遅れの戦術
モウリーニョはかつてバルセロナでボビー・ロブソンの通訳として、働いていた。そこでかつて父親が監督をしていたチームのスカウトとしての経験等が活き、アシスタント・コーチに昇格する。そして、ボビー・ロブソンがクラブを去った後もファン・ハールのアシスタントを務めた。ファン・ハールの下、バルセロナはリバウドやフィーゴを要し、97-99年の間に2度のリーグ優勝を果たす。この時のキャプテンがグアルディオラだった。そして、時は過ぎ、2008年にライカールトがバルセロナの監督を退くと、後任は、グアルディオラか、当時インテルの監督をしていたモウリーニョにふるいが掛けられた。バルセロナは、監督経験豊富なモウリーニョではなく、1部リーグの監督経験のないカンテラ出身のグアルディオラを選んだのだった。そこから、モウリーニョはバルセロナとグアルディオラを嫌うようになる。グアルディオラが攻撃的なサッカーをするなら、モウリーニョは守備的なサッカーをする。グアルディオラがポゼッションベースのフットボールをすれば、カウンター狙いのボールを持たないフットボールをする。グアルディオラが高い位置からプレスをかけるなら、モウリーニョは引いて守る戦術を取った。そして、ビックマッチで勝つために、次の7つのポイントを基に試合をした。

  1. 試合は、ミスが少ないチームが勝つ
  2. フットボールは、相手に多くのミスをさせたチームが勝つ
  3. アウェイでは、相手よりも優れようとするのではなく、ミスを誘うほうがいい
  4. ボールを持ったチームは、よりミスを犯しやすい
  5. ポゼッションを諦めたチームは、ミスする確率を減らす事が出来る
  6. ボール持ったチームは、不安を感じる
  7. したがって、ボールを持っていないチームがより強い

モウリーニョは、こうしたミスを誘発させる、ネガティブなフットボールを貫き、フットボールの敵とまで言われたが、インテル、レアル、チェルシーでタイトルを獲得し続けた。しかし、負ければ、他の監督以上に非難にさらされる。

だが、時代は変わり、選手達も変わった。ただ勝つのではなく、魅力的(攻撃的)なフットボールをして、勝利する事に主眼を置いた。

それは皮肉にも、グアルディオラがバルセロナで監督していた2008-09シーズンに3冠を達成した事で、フットボールのトレンドはグアルディオラが掲げたポゼッション、ポジショナルプレー、攻撃的なスタイルへシフトしていった。その後、モウリーニョがインテルで2009-10シーズンに3冠を達成し、レアルの監督になったが、その流れを変えるどころか、バルセロナ相手に大敗を喫する事もあった。そして、グアルディオラは、2010-11シーズンもリーグとチャンピオンズリーグを制した。そして、そのトレンドは今では、より一層強くなったのかもしれない。それだけが、モウリーニョが時代遅れの理由ではない。守備的ミッドフィルダーが下がって、数的優位を作るスタイルや、ボールを持った選手に対してミッドフィルダーがプレスをかける戦術、トライアングルやダイヤモンドを形成してパスをつなぐスタイル等、以前は目新しかった戦術は、他のチームでも実践している戦術になってしまった事も一因にある。

3年目のシンドローム
最近では、2014-15シーズンにチェルシー2年目でタイトルを獲得するも、翌シーズンには、スランプに陥り、クリスマスに解任された事は記憶に新しい。それも、今回のマンチェスター・ユナイテッド同様、夏の移籍市場で思うように選手を獲得出来なかった事から始まった。そして、結果が伴わない事で、レフリーの決断を疑問視し、クラブドクターと衝突した。カペッロは、モウリーニョは2年で選手を消耗させると語った。モウリーニョは選手のモチーベションを高める為に、わざと選手を煽る(あおる)事もあるが、そうしたやり方も今の選手達には通じなくなってきている。事実、アザール、コスタ、ファブレガスといった選手達との仲違い(なかたがい)も報じられた。チェルシーだけではない。レアル・マドリードでは、カシージャスやセルヒオ・ラモスといった選手達と確執した。そして、マンチェスター・ユナイテッドでは、昨シーズンのトッテナム戦でのタッチラインでのやりとりからポグバとの確執が報じられた。そして、試合に負ける度に、メディアから関係悪化をあおられ、ポグバのインスタでの投稿がより一層、関係を実際に悪くしていった事は間違い無い。

 

カラバオカップでのポグバのインスタ投稿が気に入らないモウリーニョ↓

 ジダンの次期マンチェスター・ユナイテッド監督が盛んに噂されているが、モウリーニョがまずクリスマスまでもつかどうかといったところだろう。結果次第では、インターナショナルブレイク中(10月10日頃~)に解任も全くありえない話では無い。

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