ストーリー:スーパーエージェント【ジョルジュ・メンデス】

ジョルジュ・メンデスと言えば、サッカー界で最も有名な代理人である。その理由の1つは、ユヴェントスに所属する、あのクリスチャーノ・ロナウドの代理人だからである。だが、クリスチャーノ・ロナウドだけではない。以前、移籍金総額ランキング(Top 10)を紹介したが、その中にも、メンデスが扱う選手がいる。バイエルンにローン移籍中のハメス・ロドリゲス、パリ・サンジェルマンのディ・マリアもメンデスのクライアントである。選手だけでなく、監督も扱っている。中でも、ジョゼ・モウリーニョが最も有名だろう。ジョルジュ・メンデスは、もはや、ただの代理人ではなく、サッカー界で最も影響力のある一人とまで言われる。現在、52歳のメンデスだが、2003年(当時37歳)頃まで無名に等しかった。どのようにして、彼はそこまで登りつめたのだろか?

代理人になるまで
ジョルジュ・メンデスは、1966年にポルトガルの首都リスボンに生まれる。その後、ヴィアナ・ド・カステロへ移住し、そこの下部リーグでセミプロとして、プレーする。ポジションは、奇(く)しくも、ロナウドと同じ左ウィンガーだった。だが、プロの道は険しく、多くのクラブから、断られ、プロを諦める。その一方で、さびれたショッピングモールにビデオショップを開店するというチャンスに飛びついた。そこをスタートにして、ビジネスの道を歩む。その後、ビーチにバーをオープンさせたり、ナイトクラブを経営した。そこで、ポルトやブラガでプレーする選手達と出会うようになる。

1996年には、当時、ヴィトーリアに所属するゴールキーパー、ヌーノ・エスピーリト・サント(現 ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFC(以下、ウルブス)監督)と出会い、友人関係を築くのであった。そして、ヌーノは、デポルティボ・ラコルーニャとの移籍交渉を前にして、メンデスに代理人として、交渉するように頼んだのだった。ヌーノの決断は、経験よりも、信頼と直感によるものだった。移籍に関して、右も左もわからないメンデスだったが、交渉努力が報われ、ヌーノはデポルティボとの契約に至った。それが代理人としての初契約となった。デポルティボで移籍交渉にあたったレンドイロは次のように語った。「彼の伝え方には、感情がこもり、彼の提案に対して、ノーというのが難しかった。」

2つの転機
この契約をきっかけにして、デコ(のちにバルセロナ)、コスティーニャ、ジョルジュ・アンドラーデといった選手をFCポルトに移籍させる。そして、2002年には、クリスチャーノ・ロナウドの母親がライバルの代理人からメンデスに切り換える決断をする。これが1つの大きな転機となる。スポルティングに所属する当時17歳のロナウドは、この後、マンチェスター・ユナイテッドとの親善試合に出場し、アレックス・ファーガソンの目に止まり、マンチェスター・ユナイテッドに移籍することになるのだが、この移籍交渉をしたのは、ジョルジュ・メンデスだった。

そして、もう1つの転機は、2003-04シーズンに、ジョゼ・モウリーニョ率いるFCポルトがチャンピオンズリーグ優勝という快挙を成し遂げた時だった。ポルトガルは、人口わずか1千万人の小国で、スペイン、イタリア、イングランド、ドイツといったビッククラブを抑えての優勝は、当然、監督や選手達へ注目が向けられ、移籍の話も絶えない。事実、この後、クライアントのモウリーニョとリカルド・カルヴァーリョ、パウロ・フェレイラはチェルシーへ、デコはバルセロナへ移籍した。

イギリスのガーディアンによれば、2001年から2010年にかけて、ポルトガルのトップクラブである、FCポルト、ベンフィカ、スポルティングCPに関する移籍の約70%はジョルジュ・メンデスが関わっているという。下記にジョルジュ・メンデスが扱う選手を挙げてみたが、ポルトガルの有名選手の多くは、ジョルジュ・メンデスのクライアントである。まだ無名に近い、FCポルトに所属していたハメス・ロドリゲスをモナコへ移籍させたのもメンデス。アグエロをアトレティコ・マドリードからマンチェスター・シティへ移籍させたのもメンデスである。こうして、メンデスは着実にネットワークをヨーロッパ中に拡大させていった。

2017年には、仲の良いヌーノがウルブス(現在、プレミアリーグへ昇格)の監督に就任し、ウルブスには多くのポルトガル選手が在籍し、一時は、代理人であるメンデスがクラブ運営に関与していると疑われたほどだ(代理人はクラブ運営には関与できず、中立的な立場でなければならない)。2018-19シーズンには、8名ほどのポルトガル人選手が在籍しており、ジョルジュ・メンデスの影響力の大きさが伺える。

クリスチャーノ・ロナウドは、ジョルジュ・メンデスについて、正直、誠実かつ、代理人のプロだと、事あるごとに褒めている。


選手一覧
 まとめ
主なポルトガル人選手
クリスチャーノ・ロナウド (ユヴェントス)
ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)
ジョアン・カンセロ(ユヴェントス)
ネルソン・セメド(バルセロナ)
アンドレア・シウヴァ(セビージャ)
ぺぺ(ベシクタシュ)
クアレスマ(ベシクタシュ)
アンドレ・ゴメス(エヴァートン)
レナト・サンチェス(バイエルン・ミュンヘン)
ゴンサロ・ゲデス(バレンシア)
ルイ・パトリシオ(ウルブス)
ジョアン・モウティーニョ(ウルブス)
ディオゴ・ジョタ(ウルブス)
イヴァン・カヴァレイロ(ウルブス)
ルベン・ネヴェス(ウルブス)

有名選手
ハメス・ロドリゲス (バイエルン・ミュンヘン)

ディ・マリア (PSG)
チアゴ・シウバ(PSG)
ジエゴ・コスタ (アトレティコ・マドリード)
ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)
セルヒオ・アグエロ (マンチェスター・シティ)
ニコラス・オタメンディ(マンチェスター・シティ)
エデルソン(マンチェスター・シティ)
ミランダ(インテルミラノ)
ファルカオ(モナコ)
エセキエル・ガライ(バレンシア)

監督
ジョゼ・モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド)
ヌーノ・エスピーリト・サント(ウルブス)
パウロ・フォンセカ(シャフタール・ドネツク)

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